僕がどこかで誰かと生きていたという記録。

もう30年以上前の話。 大学時代は京都で4年間を過ごした。

京都市右京区を走る通称『嵐電』と呼ばれる路線に
「車折駅」というのがあった。縁もゆかりもない駅だが、なぜいまだに覚えているのか。大学一回生の冬のある日、四回生の先輩からこの駅の名前を初めて聞いた。
 
「嵐電の車折駅の近くに深夜も営業している喫茶店があるんや。ミレイって名前なんやけど、そこがな、夜中になると女子大生ばかりが集まるっていう伝説の店なんや」
「マジですか!?」
「おう、マジやで。俺も数年前に先輩に連れてってもらったことがあるんやけど、そりゃもう女子学生ばっかりやったわ」
「マジですか!?」
「行ってみるか。俺も久しぶりやけどな」
「マジですか!? 行きます行きます!」

数日後、先輩と一回生の男子2人の計3人は、深夜に原チャリで車折駅を目指した。最終電車も過ぎた後の時間だ。目的地である喫茶ミレイは、車折駅に原チャリを停めて歩いて数分のところだった。

昭和55年頃、24時間営業のコンビニやファミレスもない時代に夜中に喫茶店が営業しているのだ。それだけでも貴重なスポット。男子の遊び心をくすぐる。
さらに、そこへ行くと周りは若い女子で溢れているというではないか。 血気盛んな男子学生たちは心うきうきというより、口が渇いて生唾が出るような、そして胃が縮まるような緊張感の中、駅から住宅街の路地裏を歩いていく。

【喫茶ミレイの前に到着。店内の白熱球の灯りが暗闇の住宅街の中にほんわりと暖かい空間を作り上げる。

「営業してんで」
「してますね」
「入るで」

先頭で堂々とドアを開ける先輩の背中に隠れるようにして続く。ざわざわとした声からしても店内は多くの客で賑わってるようだ。

店内に入りそっと目を開いて周囲を見渡した。

満席の店内にいたのはすべて男・・・。  


「マジですか!?」

男が考えることは皆一緒だった。

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(写真はイメージです)

補足ですが、
嵐電(らんでん)とは、京福電気鉄道嵐山本線の略称です。車折駅(くるまざき)駅は、現在は、車折神社駅に名称変更されてます。

【喫茶ミレイ】って、まだやってらっしゃるのかな〜。





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上野万太郎/僕がどこかで誰かと生きていたという記録。《食》との出会いは《人》との出会い。

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「福岡のまいにちカレー」(2014年4月)
福岡で毎日カレーを食べながら48店をカメラを持ってオーナーさんをインタビュー。カレーの数だけ物語がありました。

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「福岡カフェ散歩」(2012年12月)
福岡のカフェ54店を取材。オーナーさんの熱い想いを伝えたい。

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